2024年も日本語ラップシーンは進化を続け、TikTokを通じて新たな才能が次々と発掘されています。
しかし、この豊かな音楽の海の中で、真に価値ある作品を見つけ出すのは容易ではありません。
どの曲を聴けばいいのか分からない
新しいアーティストの情報が追いつかない
という声も少なくありません。
そこで本記事では、2024年にTikTokでバズった日本語ラップの中から、特に注目すべき10曲をセレクトしてご紹介します。これらの楽曲は、リリック、ビート、パフォーマンスのいずれもが秀逸で、日本語ラップの新たな可能性を示すものばかりです。
この記事を通じて、プレイリストに加えたくなるような素晴らしい楽曲との出会いがあることを願っています。
それでは、2024年の日本語ラップシーンを彩る10曲をご紹介していきましょう。
YZERR – guidance
「guidance」は、ブーンバップ調のビートに乗せて展開される5分を超える大作です。
YZERRの鋭い社会批評とヒップホップカルチャーへのリスペクトが込められた歌詞が特徴的です。
この曲は、舐達麻とジャパニーズマゲニーズに対するディスナンバーとして制作されました。
2023年から続いていた一連のビーフに関連し、舐達麻の「FEEL OR BEEF BADPOP IS DEAD」とジャパニーズマゲニーズの「I guess I’m beefin’」に対するアンサーソングとなっています。
- 舐達麻とジャパニーズマゲニーズへの批判
- BAD HOPの東京ドーム解散ライブへの言及
- OZROSAURUSの「Players’ Player feat. KREVA」へのリスペクト
- ヒップホップカルチャーを生んだアフリカ系の人々の差別と歴史への言及
YZERRは当初、ラジオ番組で「guidance」の一部を公開し、リリースを検討中と述べていました。
その後、ファンの要望に応える形でフルバージョンが発表されました。
「guidance」は、BAD HOPの最後のアルバム『BAD HOP』に収録されています。
このアルバムは2024年2月9日にリリースされ、BAD HOPの解散ライブ「BAD HOP THE FINAL at TOKYO DOME」(2024年2月19日開催)に先駆けて発表されました。
YZERRの「guidance」は、日本のヒップホップシーンにおける重要な一曲として注目を集めました。アーティスト間のビーフを題材にしながらも、ヒップホップカルチャーへの深い理解と敬意を示す楽曲として、多くのリスナーの心を掴んでいます。
swetty – junkie
「junkie」は、エモーショナルなdigicoreサウンドとロックの要素を融合させた楽曲です。
swettyの透明感のある声質と、中毒性を表現した歌詞が特徴的です。
I’m addiction to you
弾け飛ぶ憂鬱
Side effect は苦痛
考えられないwith out u
脳が君を忘れてくれないや
この歌詞からも分かるように、恋愛における依存や中毒性を巧みに表現しています。
2024年3月4日〜10日の集計では、Billboard JAPAN Heatseekers Songsチャートで首位を獲得しました。
ストリーミングチャートでも91位にランクインし、swettyにとって初のヒートシーカーズチャート1位となりました。
swettyは大阪を拠点に活動するアーティストで、もともとSoundCloudを中心に活動していました。
「junkie」のサブスクリプションサービスでの配信開始を機に、TikTokなどのSNSで多数のレコメンド動画が投稿され、若者を中心に人気が広がりました。
swettyの「junkie」は、エモーショナルな歌詞とサウンド、そして著名アーティストからの推薦も相まって、2024年の日本の音楽シーンで大きな話題を呼んでいます。
今後のswettyの活動にも注目が集まっており、日本のラップシーンの新たな才能として期待されています。
AK-69 – ONE SHOT feat. Watson, Eric.B.Jr
「ONE SHOT」は、AK-69の力強いラップと、今話題の若手ラッパー達であるWatsonとEric.B.Jrの個性的なフローが融合した楽曲です。タイプライターによるプロデュースで、現代的なサウンドと伝統的なヒップホップの要素が巧みに組み合わされています。
歌詞には、ストリートの生活や成功への道のりが描かれています。
修羅場でこさえるFLOW
Step like B-walk
If you don’t know (Now you know)
でらイケとるHomies集合
これらの歌詞は、アーティストたちの経験や成功への決意を表現しています。
Keigo Mochizukiが監督を務め、NICK JPとTomohito Bobが撮影を担当しました。ビデオでは、アーティストたちのパフォーマンスと都市の風景が印象的に描かれています。
AK-69の「ONE SHOT feat. Watson, Eric.B.Jr」は、日本のヒップホップシーンの多様性と創造性を示す楽曲として注目を集めています。3人のアーティストの個性が光る本作は、2024年の日本のヒップホップシーンを代表する楽曲の一つとなっています。
ZORN – 声
「声」は、ZORNの力強いラップと深い歌詞が特徴的な楽曲です。
サウンドプロデュースはBACHLOGICが担当し、現代的なヒップホップサウンドと伝統的な要素を巧みに融合させています。
歌詞には、家族関係や人生の苦難、そして過去の記憶などが描かれています。
特に印象的な部分として、
いつも周りより一歩先
でっかな声 カラオケ キーンとなり
ダンスが上手かった馬鹿でいい奴
顔パンくらったら回っていなす
これらの歌詞は、ZORNの個人的な経験や観察を反映しており、リスナーの共感を呼んでいます。
配信日の前日である2024年4月19日にYouTubeで公開されました。映像作家の山田健人が監督を務め、ZORNのパフォーマンスと歌詞の世界観を視覚的に表現しています。
シングルのジャケット写真は、写真家の川上智之がポラロイドフィルムを使用して撮影しました。
このレトロな手法は、楽曲の雰囲気と見事にマッチしています。
- Billboard Japan Hot 100: 32位
- Billboard Japan Download Songs: 2位
- オリコン週間デジタルシングルランキング: 5位
ZORNの「声」は、アーティストの成熟した表現力と現代的なサウンドが融合した作品として、2024年の日本のヒップホップシーンで大きな注目を集めています。個人的な経験を普遍的なテーマに昇華させる歌詞の力と、BACHLOGICによる洗練されたプロデュースが、多くのリスナーの心を掴んでいます。
Nozomi Kitay & GAL D – MOSHI MOSHI feat 百足
「MOSHI MOSHI feat. 百足」は、Nozomi KitayとGAL Dの個性的なボーカルと、百足の特徴的なラップが融合した楽曲です。現代的なポップサウンドとヒップホップの要素が巧みに組み合わされており、キャッチーなメロディーと印象的なリリックが特徴です。
歌詞には、恋愛や人間関係の複雑さが描かれています。
もしもし まだ I love you baby
ときどき I’m going crazy
懲り懲り なのに I want you
沼ってる 君の愛 独り占めさせて
これらの歌詞は、現代の若者の恋愛観や感情を巧みに表現しており、多くのリスナーの共感を呼んでいます。
Ken Harakiが監督を務め、kenya shiinaが撮影を担当しました。ビデオでは、アーティストたちのパフォーマンスと都市の風景が印象的に描かれており、楽曲の世界観を視覚的に表現しています。
「MOSHI MOSHI feat. 百足」は、TikTokなどのSNSで多くの動画に使用され、若者を中心に人気が広がっています。また、音楽ストリーミングサービスのプレイリストにも多数選出されるなど、注目度の高い楽曲となっています。
Nozomi KitayとGAL Dの「MOSHI MOSHI feat. 百足」は、現代的なサウンドと印象的な歌詞、そして3人のアーティストの個性が融合した魅力的な楽曲です。2024年の日本の音楽シーンを代表する楽曲の一つとして、今後さらなる注目を集めることが期待されています。
千葉雄喜 – チーム友達
「チーム友達」は、シンプルかつキャッチーなフックと、千葉雄喜独特のストレートな歌詞が特徴的です。
楽曲の核となるフレーズ「チーム友達」の繰り返しが印象的で、リスナーの記憶に残りやすい構成となっています。
歌詞には、友情や地元愛が描かれています。特に印象的な部分として:
これらの歌詞は、シンプルながらも千葉雄喜の世界観を鮮明に表現しています。
千葉雄喜の地元である東京・王子駅前で撮影されました。
地元の仲間たちと共に踊り、タバコを吸う姿が印象的に描かれており、楽曲の世界観を視覚的に表現しています。
千葉雄喜は、以前KOHHの名義で活動していた日本のラッパーです。
2021年に引退を宣言しましたが、2024年に本名で音楽活動を再開しました。「チーム友達」は、彼の復帰後初のシングルとなります。
「チーム友達」は、そのシンプルさと中毒性のあるフックにより、TikTokなどのSNSで大きな話題を呼んでいます。
また、多くのアーティストによるリミックスやカバー、ダンスオマージュなど、幅広いムーブメントを生み出しています。
千葉雄喜の「チーム友達」は、シンプルながらも強烈なインパクトを持つ楽曲として、2024年の日本の音楽シーンで大きな注目を集めています。アーティストの復帰作としても話題を呼び、今後の活動にも期待が高まっています。
この楽曲は、現代のヒップホップシーンにおける新たなトレンドを示すものとして、音楽ファンやクリエイターたちの間で広く議論されています。
千葉雄喜の今後の活動と、「チーム友達」が音楽シーンに与える影響に、引き続き注目が集まることでしょう。
KEIJU – Wind Rise ft. JJJ
「Wind Rise ft. JJJ」は、KEIJUの力強いラップとJJJのメロディアスなボーカルが融合した楽曲です。
現代的なヒップホップサウンドと、JJJの特徴的な歌声が絶妙にマッチしており、リスナーを引き込む魅力的な楽曲となっています。
この楽曲のミュージックビデオも公開されており、KEIJUの公式YouTubeチャンネルで視聴することができます。ビデオでは、楽曲の世界観を視覚的に表現し、KEIJUとJJJのパフォーマンスが印象的に描かれています。
- KEIJU: 日本の若手ラッパーとして注目を集めているアーティスト。独自のスタイルと力強いラップで、ヒップホップシーンで急速に人気を獲得しています。
- JJJ: 個性的な歌声とメロディーセンスで知られる日本のシンガーソングライター。多くのアーティストとのコラボレーションでも注目を集めています。
「Wind Rise ft. JJJ」は、KEIJUとJJJのファンの間で高い評価を得ており、音楽ストリーミングサービスでも多くの再生回数を記録しています。また、この楽曲を含むEP「Speed Tape」全体としても、日本のヒップホップシーンで大きな話題を呼んでいます。
KEIJUの「Wind Rise ft. JJJ」は、現代的なサウンドと二人のアーティストの個性が見事に融合した楽曲として、2023年の日本の音楽シーンで注目を集めています。
EP「Speed Tape」の中でも特に人気の高い楽曲の一つとして、KEIJUのキャリアにおける重要な作品となっています。
この楽曲は、KEIJUの実力とJJJとのコラボレーションの成功を示すものとして、音楽ファンやクリエイターたちの間で広く評価されています。
今後のKEIJUの活動と、さらなるコラボレーションの可能性に、引き続き注目が集まることでしょう。
5lack – 5xL Feat.LEX
「5xL Feat. LEX」は、5lackの独特なスタイルと若手ラッパーLEXの個性が融合した楽曲です。
世代を超えたコラボレーションにより、新しさと懐かしさが共存する独特な雰囲気を醸し出しています。
この楽曲のミュージックビデオは、清水康彦がディレクターを務めています。5lackの公式YouTubeチャンネルで公開されており、楽曲の世界観を視覚的に表現しています。
- 5lack: 日本のヒップホップシーンで独自の位置を確立しているラッパー。独特のフローと詩的な歌詞で知られています。
- LEX: 若手ラッパーとして注目を集めている新世代のアーティスト。
5lackの「5xL Feat. LEX」は、世代を超えたコラボレーションによって生まれた注目の楽曲です。
アルバム『report』の中でも特に話題を呼んでおり、5lackの音楽性の進化と、LEXとの化学反応が見事に表現されています。
この楽曲は、日本のヒップホップシーンにおける世代間の交流と、新旧の融合を象徴する作品として評価されています。5lackの今後の活動と、さらなるコラボレーションの可能性に、引き続き注目が集まることでしょう。
Creepy Nuts – Bling‐Bang‐Bang‐Born
「Bling-Bang-Bang-Born」は、テレビアニメ『マッシュル-MASHLE-』第2期「神覚者候補選抜試験編」のオープニングテーマとして書き下ろされました。アニメとのコラボレーションにより、楽曲の人気が急速に広がりました。
ノンクレジットOPムービーが2024年1月7日にアニプレックスのYouTubeチャンネルで公開され、わずか2週間で1000万再生を達成しました。この驚異的な再生回数は、楽曲の人気を如実に示しています。
楽曲に合わせた「BBBBダンス」がTikTokなどのSNSで大流行しています。
アニメ声優陣も参加し、2024年1月時点でTikTokでの総再生回数が1億9000万回を超えるなど、社会現象となっています。
「Bling-Bang-Bang-Born」は、キャッチーなフレーズと独特のリズムが特徴的です。
R-指定の鋭いラップとDJ松永のプロデュースが見事に融合し、聴く者を引き込む魅力的な楽曲に仕上がっています。
- Spotify「世界チャートTop100」80位にランクイン(2024年1月15日付)
- Billboard JAPAN “JAPAN Hot Animation”で初登場11位(2024年1月17日公開)
Creepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」は、アニメタイアップやSNSでの流行により、2024年の日本音楽シーンで最も注目を集めている楽曲の一つとなっています。
キャッチーな音楽性と、アニメとのコラボレーション効果が相まって、幅広い層から支持を得ています。
今後も楽曲の人気と影響力は続くことが予想され、Creepy Nutsの代表作として長く記憶に残る作品となりそうです。
DJ TATSUKI – City of Dreams feat. IO & MonyHorse
「City of Dreams」は、DJ TATSUKIが2022年にヒットさせた「TOKYO KIDS」に続く新たな東京アンセムとして制作されました。IOとMonyHorseをフィーチャリングに迎え、東京のヒップホップシーンを象徴する楽曲となっています。
- トラック制作: ZOT on the WAVE, Homunculu$, TRILL DYNASTY
- イントロ参加: D.O(東京を代表するラッパー)
MVは東京のヒップホップシーンの聖地である渋谷宇多川で撮影されました。
DJ TATSUKIがヒップホップを通して出会った多くの仲間が出演しており、東京のヒップホップコミュニティの結束を視覚的に表現しています。
「City of Dreams」は、DJ TATSUKIが2年ぶりにIOとMonyHorseと共演した作品です。
この楽曲は、東京のヒップホップシーンに大きな影響を与えることが期待されており、新たな世代のアーティストたちの声を代表する作品となっています。
DJ TATSUKIの「City of Dreams feat. IO & MonyHorse」は、東京のヒップホップシーンの現在を象徴する楽曲として注目を集めています。豪華な制作陣と参加アーティスト、そして東京の街を舞台にしたミュージックビデオにより、この楽曲は2024年の日本のヒップホップシーンを代表する作品の一つとなることが期待されています。
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回紹介した楽曲は以下の通りです。
2024年の日本語ラップシーンは、多様性と創造性に富んだ作品が次々と生まれています。
ZORNやAK-69のような確立されたアーティストから、新しい才能の台頭まで、シーンは活気に満ちています。
特筆すべきは、これらの楽曲がTikTokを通じて広く認知され、新たな文脈で楽しまれていることです。
音楽とビジュアル、そしてユーザーの創造性が融合することで、楽曲の新たな魅力が引き出されています。
また、日本の伝統と現代のヒップホップの融合や、社会的メッセージを含んだリリック、そして洗練されたプロダクションなど、日本語ラップの表現の幅が広がっていることも注目に値します。
日本のラップシーンの多様性と創造性を示す素晴らしい例として、これらの楽曲は単なる流行りの曲としてだけでなく、現代の若者の声を代弁する重要な作品として、音楽史に刻まれることでしょう。
2024年の日本語ラップシーンは、さらなる進化を遂げつつあり、今後も目が離せません。
この中で気に入ったアーティストや曲があれば、ぜひご自身のプレイリストにも追加して聴いてみてくださいね!